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おはようロビンス!

最近の様子(田中教授の左隣は、2013年第1回おはようロビンス賞の寺井小百合さん)

▲最近の様子(田中教授の左隣は、2013年第1回おはようロビンス賞の寺井小百合さん)

日時:毎週火曜日 朝8時から8時40分まで
場所:腫瘍病理学分野(第2病理)図書室

※医学部中研究棟4階

学生さんが、持ち回りで教科書の英文を読んで訳す勉強会です。一冊の本を読破することを目的としているのではなくて、医師になっても生涯使えるような体系的な教科書をゆっくり読むことで医学英語、病理学、医学に親しむことを目的としています。教科書は読む度に新たな発見がある本です。興味のある学生さんは飛び入りで構いません。
誰でも好きな時に参加してみるだけでOKなのですが、最近は医学部3年生の秋の病理学の講義とともにスタートし、5年生の春の実習が始まるまで1年半熱心に参加してくれる人がいます。昨年より、このような皆勤、またはそれに近いような熱心な学生さんには「おはようロビンス賞」を創設して表彰しています!

Pathologic Basis of Disease

Pathologic Basis of Disease

北大医学部では、3年生の秋から病理学の系統講義が始まります。その時に当教室の「おはようロビンス!」もスタートします。毎週1回、朝の講義が始まる前の40分間、病理学を代表するロビンス先生の英語の教科書「Pathologic Basis of Disease」を学生さんたちと読みます。準備されたささやかな朝食とコーヒーで、ゆったりとした雰囲気の中で勉強が進み、いつも「早起きは三文の得」を味わっています(写真右)。

ロビンス先生の教科書は、内科で言えばハリソン、小児科ではネルソンに匹敵する立派な成書ですが、お堅い英語ばかりではなく、生き生きとした表現やユーモアが特徴です。内容もとても充実しており、今でも読めば必ず勉強になります。学生に対しても、「医学部は卒業した時から、専門以外は新しい知識の仕入れが止まるから、ロビンス先生の病理学書は何科になっても生涯身近に置いて勉強するには最適な教科書だよ」と薦めています。

この勉強会は、1986年に北大に赴任した長嶋和郎現名誉教授が始められたもので、以後23年間続いています。初代は北大65期の先輩方で、遠藤由香さん(現在米国で循環器内科医)、長川達也さん(現札幌厚生病院内科)、人見嘉哲さん(現金沢大学医学部)など、大変優秀な先輩方が集まっていたのを思い出します。今は北大88期の学生さんを中心として勉強していますが、1年生から5年生までいろいろな学年の人が熱心に来ています。ここ数年は他学部でも病理に興味がある大学院生の人たちが顔を出しており、誰でも自由に出入りできるのが特徴です。

ロビンス先生

ロビンス先生

著者のスタンレー・ロビンス(Stanley L. Robbins)先生(写真左)は、1915年米国ポートランド市に生まれ、大学はボストンにあるマサチューセッツ工科大学、そしてタフツ大学とどちらも主席で卒業しています。ボストン大学医学部に勤務し、1965 年にボストン大学医学部病理学講座主任教授となられました。
数年前、日本病理学会の特別講演で、現在の著者のシカゴ大学のKumar先生の講演をお聞きしましたが、ロビンス先生は1950年にボストン大学に勤務した時に病理学の学生講義を担当し、当時の教科書があまりに形態に重きを置いており、臨床医学とかけ離れているのを嘆いて、自ら教科書の執筆を思い立ったとのことでした。
そして、ただ形態と診断名の対応ではなくて、疾患のメカニズム、なぜ病気が起こるのか、この組織形態はどのような臨床症状と関連があるのか、など、臨床を強く意識した病理学の教科書を完成させました。
これが1957年初版の「Text book of Pathology」です。

教科書の特徴

Pathologic Basis of Disease

この本は、病理専門医からは酷評されたようですが、テンプル大学の学生からは「I have begum reading my new Robbis’textbook. I know Someone up there loves me.」とメッセージが届き、大人気でした(Kumar, Am. J. Pathol., 164, 2004)。3版まで発行されその後は1974年初版の「Pathologic Basis of Disease」に引き継がれ、現在7版に至ります。そろそろ8版が出る頃です。このほか、よりコンパクトな内容の「Basic Pathology」(いわゆるBaby Robbins)も出ており、これも8版となっています。※2015年時点では第9版

ロビンス先生の教科書は、ユーモアにあふれています。またロビンス先生は「There is no good writing, only good re-writing.」と言いながら、世界の学生のために改訂を続けられていたそうで、その精神は現在も受け継がれています。患者に対する臨床病理診断のためにトップリサーチを理解し、そこから病気のメカニズムを考えていくという姿勢は、当時の言葉にはありませんが、現在のトランスレーショナルパソロジーを支える精神ではないでしょうか。

現代の学生事情

5年くらい前までは、医学部で大きなリュックにハリソン、フェルソンなど何冊も医学書をつめこんだ学生をしばしばみかけましたが、今は皆無です。皆教科書そのものを買わなくなってきていて、インターネットの情報を頼りにレポートを仕上げています。圧倒的に効率よく医学知識に触れられ、モニター上で何時間も勉強して、モニター上で記憶し、考えをまとめます。米国の医学部で教えている友人も全く同じ傾向と言っていました。それはわれわれとスタイルは違いますが、時代の変化なのだろうし悪いことではない。
ただ、朝の日差しとモーニングコーヒーの香りだけはモニター上では今のところまだ味わえません。(2007年記)